春雷
「私、私だって、
あなたが好きです」
「えっ、ホントにっ?」
「私はずるいからあなたのせいにしてるけど、最低ですね‥
夫がいるのにあなたが好きだなんて‥」
「僕、二番目でもいいんですよ」
「ぶっ殺しますよ」
「‥すみません」
「自分が情けないです。
ほんとに、これからどうしたらいいんですか‥
中学生じゃあるまいし、簡単にお付き合いってわけにはいきませんよ」
「タイミングです。何ごとも、来たる日が来たら、その時は僕はチャンスを逃しませんよ」
タイミング‥て、そんな時、あるのだろうか。
「ああ、
そういえば、今日はクリスマスですね‥
クリスマスを柴田先生と過ごせたのに、
不甲斐ない‥ゴホゴホ」
「もう、休んで下さい。休めないなら退散しますから‥」
「フランス、僕は本気ですよ」
「‥娘も、一緒に?」
「もちろんです。約束したでしょ?サインボールとれたら、行くって」
「!なんで取れたの知ってるんですか?!」
現地では取れなかったけれど、
たしかにフライングゲットできた。
「由乃さんが教えてくれました。さあ、貴女も、本気で考えてくださいね‥フランス」
「‥別れるのは、簡単ではないと思います‥」
「まあ、クリスマスにそんな事を考えるのはやめましょう。
だけど、僕と、由乃さんと生きていく道も、捨てないでくださいね‥」
彼は疲れたのだろう。
ウトウトとし始めた。
メリークリスマス‥貴女には‥僕を捧げます‥
彼はそう呟いて、目を閉じた。
一途な思いをそこまで私に貫いてくれるのかと
思うと、一筋涙が、頬を伝った。