春雷

静かに波風立たせずに夫と生きるか

愛している人の所へ、全て失っても行くか。

誰ならどう考えるのだろう。

例えばフランスに行って、彼に飽きられたら
私にはもう何も残らない。

フランスで待っていてくれてるとも限らない。
ここにいれば、この先も平凡で安定した人生が、淡々と続くのだ。

それは何百回も考えた。

だけど、彼といる時に感じる、情熱や幸福感は死んでしまう。

そう思うとやっぱり、高村先生を好きな自分は、
捨てれなかった。


最後の恋が滅んでゆくとしても、
自分が決めた道を後悔することなく生きたい。



神さま

生まれ変わったら、
また真面目に生きます。

だけど、今世は、
どうか、彼を私にください。
不真面目に生きさせてください。


泣きながら、心の中で、何かに祈った。

泣くのは私じゃない。

夫のほうだろうに‥。


冷え切った部屋に
一人でいると、最近泣いてばかりの自分がいた。
いっそ狂ってしまいたい。
そしたら何も考えずに、彼のもとに行けるのに‥。
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