ポーカーフェイス
茉那は不思議と、抵抗する気持ちにならなかった。


抱き寄せられるがまま、先輩の胸の中にいた。


先輩は、ぽんぽんと茉那の頭を撫でた。


「…泣いてもいいよ」

「先輩…」

「笑った顔の方が可愛いけどな」

「もぉー…女たらし」

「よく言われる(笑)」


すると横道から、人が歩いて出てきた。


先輩から少し体を離して目をやると、背の高い男性だった。


しかも、それは



「……茉那?」


「……司?!」


司だった。


先輩は司の姿に気付くと、慌てて体を離した。


司は少し驚いたような表情だった。


「三波先輩?」


茉那が、感情を顔に出した司を見たのは、初めてだった。


「お、おう…さっき、大学のやつらとかで集まっててさ、…俺が、つまずいちゃったから支えてもらってた!」

「あ…そうですか…」

「…丁度よかった!一緒に帰ってあげてよ」

「あ、はい」

「じゃあね!茉那ちゃん」

「あっ、はい、ありがとうございます」


先輩は走るように立ち去り、茉那は司と二人きりになった。
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