ポーカーフェイス
数秒、立ち尽くしたまま無言の時間が流れた。


司は茉那の手を、そっと握った。


「帰る?」

「…うん」


茉那が、司の方から手を握られるのも、初めてだった。



家までの道のりは、ずっと無言だった。


手を繋ぐのなんて初めてではないのに、なぜか二人は付き合い始めて間もない頃のように、ドギマギしていた。



部屋に着くと、いつもは帰ろうとする司を、茉那が引き留めて家に入れていたのに、今日は帰る素振りを見せない。


「…入っていい?」

「…うん」


司は部屋に入ると、茉那を後ろから抱きしめた。


長身で体の大きな司の腕の中に、茉那はすっぽりと収まった。


「茉那、ごめん」

「……なにが?」

「…不安にさせてた?」

「………」

「ごめん、…格好つけてた」

「……え?」
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