常盤の娘
さて、無駄話はこれくらいにして行こうか。

東条から右手が差し出される。公衆の面前、この手をぴしゃりと払ってやろうか。一瞬邪な考えも脳裏をかすめたが、結局、純花は東条の手をとった。

近くなる距離。東条は純花の耳元に口を寄せ囁いた。
「さすが、レディ。怒りに任せないところなんて素敵だ」

「ありがとう」
純花は嫌味なお世辞にも微笑で返す。そして純花は左の手に東条の手を握りつぶさんばかりの力を込めた。
< 31 / 62 >

この作品をシェア

pagetop