常盤の娘
式の後、人が引いて行っても、母はなおも泣き崩れていて、父は体を寄せ母をなだめていた。兄の死を受け止めようともがき苦しむ両親を、純花は感情の消え失せた真っ白な顔で遠目に眺めていた。あんなに胸を痛めて。無能な私じゃ、ああはならなかったはずだわ。周りの人の言う通り、私が兄さんの代わりに死ねばよかったのよ。純花の心のいくつもの傷は、彼女の自尊心など一滴残らず流してしまっていた。

純花は自身の異常に気付かないまま、両親に近づき、二人を元気づけようと声をかけた。
「私が兄を殺したも同然だもの。兄の代わりはきっと私が務めるから、心配しないで」

家へ戻ってすぐ、純花は自室を片付け……というより生活に必要のないもの、しかし、純花が純花であるために必要なものを片っ端から捨て始めた。そして、兄の部屋から、そのほとんどを占領していた大量の書物を自室に運び込んだ。これを全部、私の血と肉に変えなきゃいけない。私が兄その人にならなきゃいけない。腕にズシリとかかる重さが、今まで兄の背負ってきた責任だと思った。
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