42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】
「大丈夫です。何でもありません。」

私がそう言って話を終わらせようとすると、

「よかったら、飲みに行きませんか?
奢りますよ。」

と笑顔を見せた。

無口で真面目な喜多見さんの笑顔を見たのは、初めてだった。

飲みに誘われるのも初めて。

普段なら、絶対に行かなかったと思う。

でも、この日は、失恋の翌日。

ひとりでいるのが辛くて、誰かに一緒にいて欲しかった。

それが、アウト オブ 眼中の喜多見さんでも。

だから、

「奢ってくれるんですか?
じゃあ、行きます。」

なんて、不遜な返事をした。


1時間後、喜多見さんは、定時で上がり、駅近くのダイニングバーに連れて来てくれた。

「へぇ〜、こんなお店、あったんですね。
初めて来ました。
喜多見さんは、ここ、よく来るんですか?」
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