42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】
咲笑の幸せがお金で買えるなら、安いものだ。

だけど不妊治療は、財布の中身より、咲笑の心を削った。

仕事から帰ると、笑って
「おかえり」
と言う咲笑の目が赤い事が何度もあった。

決まって、生理が来た日だった。

毎回、俺に隠れて泣く咲笑に、俺は何もしてやれない。

治療を始めて1年ほどして、俺は治療を止めようと思った。

こんなに咲笑を泣かせるくらいなら、諦めた方が幸せなんじゃないかと思ったんだ。

だから、俺は咲笑に言った。

「そんなにお金をかけてまで、子供って必要?
2人だけで生きていくのはダメなのかな?」

咲笑が泣いてるのは知っていたが、咲笑が隠してるのにそれを理由にはできないから、お金のせいにした。

だけど、咲笑は違った。

「もし、今、ここに子供がいたとして、誘拐
されて身代金500万円を要求されたら、
どうする?
たかが500万なのに、勿体ないから、
払わない?」

「それは、払うよ。当たり前だろ。」

「じゃあ、まだ見ぬ我が子の命のために500万
くらい使っても、命の値段だとは思えない?」
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