極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

(万佑ちゃんは、まさかこんな状況になってるなんて思ってないんだもんな……。真面目に考えてあげないと)

 環は、万佑の立場になって改めて思案した。


「俺だったら、もちろん話は受けると思うよ。今までの仕事の成果を認められた上でのことなんだからね。でも、不安になるよりも楽しみで仕方ないかもしれない。新しいことに挑戦できるっていいことだから」
「……そうですよね」
「きっと、今の万佑ちゃんは、頭では分かってるけど、気持ちがついていかない感じなんじゃないかな? 気が付けば考えてて、不安がここに渦巻いてるというか」

 スーツ越しに、自分の胸のあたりに手のひらを置き、彼女を見つめる。


「そうです! そうなんです」
「でも、考えるなら前向きになってみて。異動はまだ少し未来のことなんだ。実際に広報の業務をやってみてからでも、悩むのは遅くないと思うんだけど、どうかな?」

 環の言葉に、万佑は表情を明るく変えて大きく頷く。
 内示を受けてから、そればかりを考えてしまい、悩んだって答えは出ないのだと気づかされた。
 簡単なことだけど、客観的に言われてハッとすることは多いものだ。

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