極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
『高成社長には、また後日私の方からもご挨拶に伺わせていただきます。では、夏前予定の就任をご快諾いただけたということでよろしいですね?』
「はい。これからお世話になります。またお時間を見て、お話させてください」
悩んでいたが、返事をしたら胸がスッとした。
人生、時には思い切りが必要で、悩むくらいならやってみたほうがいいこともある。
つい先日、異動で相談してくれた万佑にも同じようなことを言ったなぁと思いながら、環は通話を終えた。
「――永縞さん、よろしいですか?」
執務室のドアをノックして、舞帆が声をかけてきた。
応答すると、ゆっくり顔を覗かせた彼女の瞳には、涙が浮かんでいるようにも見える。
「どうしたの? なにかあった?」
「……いえ、あの……すみません。聞くつもりはなかったんですけど……。永縞さん、FNをお辞めになるんですか?」
「あぁ、聞こえてしまったか。悪いんだけど、決まったばかりだから聞かなかったことにして、口外しないでもらえる?」
「もちろんです! でも、私……」