極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「でも、ごめんね。辞めるのは決定事項だし、心の中にも決めた女性がいる。だから、その気持ちに応えることはできない」
「わかりました。……会議、時間通り始めますので、よろしくお願いします! 社長も出席されますので」
「わかった。ありがとう」

 ひと呼吸置く間に気持ちを切り替え、秘書としてのいつもの顔に戻った舞帆が出ていってから、環はふうっと息をついた。

(まさかだったな……。不意打ちの告白って、こんなに困るのか。ということは、万佑ちゃんも困らせてしまってるんだろうな)

 先日、ミミの店に一緒に行って以来会えていないが、電話でも想いは伝えている。
 電話越しの彼女の様子は、小さく笑って『返事は、もう少し待ってくれますか?』と丁寧に、柔らかい声で話してくれていたから、どこか勝手に安心していたけれど……。

(振られたら、立ち直れない気がする)

 友達以上恋人未満の、曖昧な関係がなくなるのは寂しい。
 連敗してきたくせにどうして自信が持てていたのかと、今になって現実を見た。

 万佑が他の誰にも関心を示さないなんて保証はないのだから。

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