極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
――異動の辞令が出て、引継ぎが始まった。
信頼できる後輩に抱えていた案件を引き継ぎつつ、今月半ばからはブルーメゾンでも業務に少しずつ慣れるように準備をし、4月からはブルーメゾンの広報担当として勤務するスケジュールだ。
同じビル内にあるとはいえ、行ったり来たりの毎日はいつの間にか疲労が蓄積していた。
『――大丈夫? ちょっと声が掠れてる気がするけど』
2、3日に一度かかってくる環からの電話は、日課になっている。
どんなときでも彼と話すと明るい気持ちになるし、特に今は相談に乗ってもらうこともあって、心強い存在だ。
「平気です。今日、すごく寒かったから……。永縞さんは風邪ひいてないですか?」
『俺は平気だよ。元気すぎてウイルスのほうが拒んでるんじゃない?』
「あははは! そんなことってあるんですか?」
小さな変化に気づいてくれた環の心遣いに、緊張が緩む。このところ仕事のことばかり考えていて、心が休まる時が少なかった。
もっと肩の力を抜いてやれればいいのかもしれないが、後任となる後輩のためにもいつも以上に頑張りすぎたのだ。