極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 今日も慌ただしく仕事をしてきたので、もしかしたら間に合わないかもしれないと思っていたけれど、どうにか順調に業務を済ませてきた。
 あと1ヶ月ほどで、ブルーメゾンの広報に出向く機会が多くなる。それまでに、きちんと後任に迷惑がかからないようにしなくてはならない。
 いつも以上に慎重に、丁寧で細やかに仕事をしているせいで、環と電話で話してからの日々はあっという間だった。

 冷たい夜風が、広場に吹き抜ける。グレーのショートダウンを羽織ってきてよかったと、白い息を吐く。
 膝下丈の白いニットワンピースに合わせた足元は、5センチヒールの黒のブーティー。うっすらと雪が積もるようになったこの季節は手袋も欠かせない。
 全体的にモノトーンにした服装は、環に会う約束が決まった数日前から決めていたものだ。

 呼吸のたびに、白くなった息が街に消えていく。
 好きな人を待つ時間の高揚感すら忘れていた万佑は、ドキドキしながら彼の到着を今か今かと楽しみにしている。

< 139 / 276 >

この作品をシェア

pagetop