極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「もしもし」
ポケットに入れたスマートフォンが震えて、万佑はすかさず応答した。相手は待ち焦がれている環だった。
優しくて落ち着いた声は、冬空の下にいる彼女の心をふっと灯す。
『万佑ちゃん、もう着いてる?』
「はい、時計広場にいます。永縞さんは?」
『ごめん、実は仕事で急用が入っちゃって、まだ会社にいるんだ。だから、どこか暖かいところに入って、もう少しだけ待っててくれる?』
「どれくらいかかりそうですか? 無理をしないで、また違う日にでも……」
環が多忙なのは、話を聞いていてよく分かっている。
一流コンサルのパートナーともなれば、日々を目まぐるしい速さで過ごしているはずだ。分刻みのスケジュールをこなす日だって珍しくないだろう。
だから、突然の予定変更だって万佑は驚かなかった。
残念ではあるけれど、それを言ったって彼の仕事の進捗が良くなるわけではないと思うのだ。