極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
『本当ごめん。急ぐから待ってて』
「私のことは気にしないで、お仕事頑張って……えっ!?」
仕事の邪魔にならないように、なるべく早く電話を切ろうとしたら、後ろからやんわりとハグをされて言葉が詰まった。
お腹のあたりに回された大きな手も、その手に提がる本革の黒いビジネスバッグも、ほのかに感じる香水の匂いも記憶に新しい。
スマートフォンを持ったまま、ゆっくりと振りかえったら、にっこりと微笑む端整な顔がそこにある。
急に入った仕事なら、終わるのが遅くなって結局会えなくなるかもしれないと、諦め半分で待つことに決めたところなのだ。
寂しいと会いたいが心を占拠して、途端に切なさを抱えていたのに。
「……驚いた?」
ついさっきまで会社にいると言っていたはずの環が、どういうわけか目の前にいる。
だけど、彼がちょっとしたサプライズをしたのだと分かった万佑は、思わず笑ってしまった。