極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
上品なステンカラーの黒いコート姿の彼の背中に、今すぐ抱きつきたい気分だ。
もしそんなことをしたら、彼はどれほど驚くのだろう。
元彼は、人前で手を繋ぐことさえ嫌がったこともあった。許されるのは、彼の気が向いた時や部屋でデートをする時だけ。
今思えば、それも浮気をしていたからなのだろうと分かっているし、環がそんな人ではないと信じているけれど、悪い経験が勢いを打ち消してしまうのだ。
数分歩いたところで、ふたりは一軒の創作フレンチレストランへ。
看板もなく、隠れるように裏路地にあるこの店は、入口の佇まいからして高級そうな雰囲気だ。環に手を引かれながら石階段を三段上り、木目の扉の向こうに踏み入れる。
とても暖かい店内は、ロビーが黒壁に囲まれていてモダンな雰囲気だ。店員の案内を待つ間、万佑は天井のシャンデリアに目を奪われた。