極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
(こんなふうに大切にしてくれる人、初めてだなぁ)
細やかな気遣いができる環に、万佑はすっかり胸をときめかせながら、彼の導きを頼りに歩いた。
入口で預けたコートの下は、ネイビーのスーツ姿。
背の高い彼がスーツを着ると、さながらモデルのようで見惚れてしまう。ビジネスバッグを手に、背筋を伸ばして姿勢よく堂々と歩く後ろ姿は、仕事ができる優秀な男性そのものだ。
(私が好きになったところで、永縞さんを狙う人は他にもたくさんいるんだろうけど……)
いくら自分のことが好きだと言葉にして伝えられても、彼の人となりを知れば知るほど、無用な不安がつきまとう。
環を信じればいいだけと分かっているのに、自分に自信がなく、恋愛にも積極的になれないからだ。
だけど、密かに想いを温めたって仕方ない。
彼が自分を想ってくれているなら、素直になればいいだけ。
椅子の横に用意された荷物入れのバスケットに視線を落とし、用意しておいたチョコレートの包みを見つめる。
(今日は……今日こそは……)
環の告白に、返事をしようと決めてきた。
ちょうどバレンタインデーの翌日に都合がついたのも、勢いに背を押されている気分だ。