極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 形のいい額にかかる長めの前髪の束をそっと掬って、横によけた。

 どこが好きなのかと聞かれたら、数えきれないほどある。
 容姿はもちろんだし、少しアルトに近い声色も好きだ。
 2回りも小さな手も好みだし、ネイルアートを施す女性らしい楽しみを取り入れているところもいい。

 そしてなによりも、仕事に懸命なところに惹かれた。
 ブルーメゾングループに勤めていることに誇りを持っているし、任された仕事がどんなに大変でも弱音や愚痴を聞かされたことはなかった。
 電話で話しているときも、デートをしているときも、いつだって笑顔でいてくれて、自分の方が元気づけられていたのは間違いない。
 唯一、異動が決まって悩んでいた時に見せた姿は、それだけ真剣に仕事に取り組んでいる証拠だった。

< 169 / 276 >

この作品をシェア

pagetop