極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
誰にも秘密の、その訳は
――3月の街並みが、少しずつ色づいてきた。
仕事終わりに通りかかった、自社ビルのテナントにある花屋の店頭は、かわいい色のラナンキュラスが並んでいて、ひと足先に春が訪れたようだった。
「はぁ、疲れたー」
1週間の業務を終え、万佑は今日も20時前に帰宅した。
バッグを置いてコートを脱ぎ、マスクを外してから手洗いうがいをし、前髪をピンで留めて、メイクを落とす。
(永縞さん、今日も忙しいんだろうなぁ。メッセージに返事がないし……。次はいつ会えるんだろう)
次のデートを心待ちにしつつも、万佑も異動日が迫っている。
想いを告げ、愛し合ってからというもの、環とは会えずじまいなので、そろそろ彼の温もりや香りが恋しくなってきた。
しかし、環は曜日などは関係なく、目まぐるしいスケジュールの中にいると知っている分、ワガママにはなれずにいる。
自宅を知っているのだから、会いに行くこともできるけれど、こんな時に押しかけるのは気が引けていた。