極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
この恋の、終わり方
――6月。梅雨でどんよりした空気はどこへやら、昨日からの社内は桜色に見える。
それもこれも、女性社員がこぞってメイクを完璧にし、あちこちに花が咲いたようだからだ。
「ねぇ、知ってる? さっき聞いたんだけど、永縞専務って未婚なんだって」
「その手の情報掴むの早いね。でも、みんな結婚のチャンスって飛びつくだろうし、競争率高そう」
「なにがすごいって、性別問わず人気がありそうなところだよね。男性社員は仕事のノウハウとか聞きたいって言ってる人もいたし」
広報が入っているフロアの女子トイレで、万佑は女性社員の話し声を聞きつつ、個室からタイミングを計っていた。
環が専務取締役として就任した昨日から、社内は一層賑やかさを増した。
仕事に対しての情熱と同じくらい、環への興味は熱いものがあるようで、男性社員までも彼の虜になっているのだ。
まだ誰にも知られていない関係は、やっぱり秘密にすると決めて正解だった。
もし自分が彼の恋人だなんて公表されたら、さっき聞いた会話も、悪口に変わっていたかもしれない。