極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
終業後、環の誘いで彼の自宅にやってきた。
途中で誰に見られるか分からないので、マンションのエントランスで待ち合わせるくらい警戒しているというのに、環は一緒に帰ろうとしていたほど、まったく気にしていないようだ。
「環さん、私たちのこと知られたらどうするんですか!? 社内ではあまり接点を持たない約束でしょ?」
「そんなに怒らなくても」
環はリビングに入るなり、バッグを置いてジャケットを脱いだ。
服装に決まりはないものの、前職の影響かスーツが一番落ち着く。だけど、1日着ていると解放されたくもなる。
ベスト姿になった環は、万佑を素通りしてキッチンの冷蔵庫から缶ビールを出した。
「聞いてますか?」
「ん? もちろん聞いてるよ」
環にくっついて歩きながら訴え続けるも、彼は万佑の頭を撫でてから、先にソファにゆったりと座ってしまった。
本気で取り合ってくれないのかと苛立ちつつ、万佑も隣に座る。
ネクタイを緩め、Yシャツのボタンを2つ空け、環は天井を仰いでまぶたを閉じた。
「ねぇ、そんなに嫌だった?」