極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 就任した昨日は、秘書と各部署へ挨拶する途中で見かけただけだったけれど、今日は働いている万佑を見れたので満足だ。

(万佑、かわいかったなぁ。誰よりもかわいいんだから、絶対に狙われてる)

 まぶたの裏に焼きつけた仕事中の彼女の姿は、数時間経っても鮮やかで、香りまで漂ってくるよう。
 目が合って慌てている顔も、エレベーターの前で偶然会った時の他人行儀な返事も、なにもかもが愛しくて胸が苦しくなる。

 それなのに、万佑は接点がないほうがいいと言う。
 確かに、関係を秘める約束はしたけれど、同じ企業で働く者同士、少しくらい話すことがあったっていいのにと、環は少しつまらない気分の中にいる。


「嫌じゃないです」
「え?」
「……嬉しいに決まってるでしょ?」

 小言を聞いた後なので、嫌だと返ってくる予想が大きく外れた。
 環はまぶたを開けて、隣にいる万佑と正面から向き合う。
 だけど、いつの間にか顔を赤らめ、恥ずかしそうにしている彼女は、目を合わせようとしない。

< 224 / 276 >

この作品をシェア

pagetop