極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「先輩、どうしたらいいでしょう?」
「この件は、先方の希望に沿って一度ラフを上げてみるといいよ。そうしたらきっと、こっちの意見を分かってくれると思う。頭の固い客先じゃないから大丈夫よ」
「わかりました。やってみます! ……あ、そうだ。万佑さんの服って、いつも格好いいですよね。私たち同期の中でも、万佑さんに憧れてる子がいて」
「そうなの!? 嬉しい、ありがとう」
自由な社風なので、服装も自由。来客があればスーツを着ることもあるが、今日はカーキ色のテーパードパンツに、襟元がきれいな開きの黒いカットソーと大ぶりのネックレスでクールな格好をしてきた。
あの日、大地が連れていた女は、守ってあげたくなるような、いかにもかわいい系の女子が着るような服だったと思い出す。
心の奥深くまで傷ついたあの夜は、未だに好きじゃない。傷は癒えたけれど、記憶が苦々しいのだ。
だから、本当に環がいてくれてよかったと思える。
(永縞さんは、あれからどうしてるんだろう……)
後輩と話し終えるなり、デスクで外線が鳴ったので、応答しながらメモにペンを走らせた。