極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
恋をするのが億劫になったわけではない。いい人がいたら、とは思っている。
だけど、また裏切られてしまうのではないかと足踏みしてチャンスを逃しそうな気もしていて……。
「あらっ! 噂をすれば影ね」
嬉々としたミミの声に振り向けば、店のドアを開けてやってきた環と目があった。
(気まずいなぁ……。今日会うとは思ってなかったから余計に……)
万佑は一瞬、イブの夜にふたりきりで話したあの時間を思い出したが、別に何もなかったし、彼だって帰宅を促したのだからと気を取り直す。
「ミミちゃん、明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。環くんが来てくれると、店に色気があっていいわぁ」
「そんなことないよ、ミミちゃんがいれば十分でしょ? あ、これ鍵。返すのが遅くなってごめん」
「いいのよ。私もあの夜は楽しんだし……。ビールでいい?」
カウンター越しにやり取りを済ませると、暖かそうなチェスターコートを脱いだ環が、万佑の隣に座った。