極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
椅子の背にコートとバッグを掛けた彼は、ミミからビールを受け取って、ようやく万佑と目を合わせた。
「こんばんは。もう座っちゃったけど、お隣いいですか?」
「……ふふっ。どうぞ」
戸惑いながらも、有無を言わせるつもりなどなかったのだろうと気づかされ、万佑は笑ってしまった。
イブの夜も、酔っ払いのサラリーマン3人組に絡まれそうになっていたら、すかさず彼が隣に来てくれたのを思い出す。
「じゃあ、再会に乾杯」
「か、乾杯……」
(相変わらず格好いいなぁ……)
「ん? なに?」
「いえ、なんでもないです」
ビールを飲む環の横顔に見惚れていたら、視線に気づかれてしまい、万佑は2杯目のビールをひと口。
ずっと頭の片隅にいた環を目の前にしたら、どういうわけか胸の奥が忙しなくて落ち着かないのだ。
あれから彼がどうしていたかを気にかけていたなんて……。
(聞いていいのかなぁ。なにを話したらいいんだろう)
ドキドキする胸の音に耳を済ませながら、早くもジョッキの半分までビールを飲んだ彼に、再び目を向けた。