極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「だって、ただの失恋話だよ? 16連敗ってだけで」

 その16連敗というキーワードが、〝ただの恋愛話〟にさせていないのだけど、きっと環本人にとってはそうじゃないようだ。


「私、お客さんと電話してくるから。誰か来たら声かけて」

 常にマイペースで自由なミミは、スマートフォンを片手に店の奥に引っ込んでしまった。
 今夜も常連客が来店しているようだし、一見さんだって馴染みの客に連れられてくるのがほとんどだから、大して誰も気に留めないけれど、最初ふらりとやってきた時は、自由な彼女に驚かされたものだ。

 環は手元の伝票に〝瓶ビール〟と書き、隣に横線を一本引く。そして、冷蔵庫から瓶を取り出し、空けたばかりのジョッキに注いだ。


「それでさ、俺の話だけど」
「あ、はい……」
「6人は見合い相手なんだ。で、5人が振られた相手、残りの5人が彼女になってくれたけど別れた人。合計16人」

 内訳から説明された万佑は、頷いて答える。

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