極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「万佑ちゃんが先生なんて、新鮮だわぁ」

 他の客とも話しつつ、こちらの話を耳に入れていた様子のミミは、楽しげに言う。


「あっ、ダメだよ。万佑ちゃんを先生って呼んでいいのは俺だけだからね? 俺の先生なんだから」
「環くんこそ、そういう独占欲が失恋に繋がってるって分かってるの?」
「独占欲のない恋なんて、偽物だと思うけどね」

 ミミと環が言い合いをしている間で、万佑は視線を行き来させる。
 男性同士の恋の話を聞いているようで、自分よりもミミの方が適任なのではないかと思ったのだ。


「あの……永縞さん」
「なに?」
「私じゃなくてミミちゃんにお願いしたらどうですか?」
「嫌だよ。女心が分かるのは、女の子でしょ?」
「あらっ! 失礼ねっ! ムカついたから、環くんの奢りでシャンパン開けてやるんだからっ!」

 女性扱いされなかったミミは、本当にシャンパンを開けてしまった。
 環も引き留めることなく、平然と料理に箸をつけ、酒を飲んでいる。

< 55 / 276 >

この作品をシェア

pagetop