極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「キスくらいしたらよかったじゃない。環くんと万佑ちゃん、実はお似合いよ?」
ミミはようやく面白くなってきたとばかりに、カウンターに身を乗り出し、目を爛々とさせて食いついてきた。
こんな時、ノリがよくてこの場を丸く収めるだけの話術があれば、「そうだよ、キスしてくれるのかと思ってたのに」なんて冗談を言えたのだろう。
でも、あいにくそんなスキルはない。
なので、万佑は口を噤んで残りのシャンパンを飲む。
「いや、でもさ。あの日は万佑ちゃんを傷つけると思ったからやめたんだ」
少しも揺れていない瞳で、環にじっと見つめられて、万佑は呼吸を忘れてしまった。
(失恋当日に付け込むこともなく、ちゃんと私のことを考えてくれてたんだ……。優しいなぁ、永縞さん)
もっと軽薄で、そのせいで16連敗もしているモテ男子だと、出会った日は思っていただけに、再会した今夜はすべてがひっくり返された気分だ。