極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「あら、いらっしゃーい! 久しぶりねぇ」
ミミが来店客の相手を始めてしまい、途端にふたりに沈黙が訪れた。こんなタイミングでは、なにを話していいのかわからなくなる。
「万佑ちゃん、今なにを考えてる?」
「えっ……、なにって」
カウンターに頬杖をついた環は、上目遣いで彼女を見つめた。
爽やかで、仕事もできるハイスペックな彼こそ、なにを考えているのか聞きたいところだ。
しかし、万佑が答えに困っていると、彼は再び距離を縮める。
そして、すんなり耳元に顔を寄せてきて――。
「……教えてよ、センセ」
他の誰にも聞こえないその声は、甘くて切なくて、どこか危険な響きがする。
先生なんて言われたら、まるで悪いことをするようで、ドキドキしてきた。
「今夜は、キスしていい?」
「だ、ダメですっ! そもそも、永縞さんは距離感を無視しすぎです。酔ってるんですか!?」
「あぁ……。こういう口説き方じゃ、きっとダメなんだろうなぁ」
(えっ、私、口説かれてるの?)
万佑があわあわしている横で、肩透かしを喰らった環は再び項垂れてしまった。