極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
――彼女は贅沢を嫌うらしい。
だけど、もし次に付き合う相手と過ごすなら、自分らしくありたいし、無理をして相手に合わせてばかりでは、いずれ関係が破たんしてしまうと思う。
そう思ってやってきたけれど、今回ばかりは彼女が言っていた通りにするべきかと、環は悩んでいた。
「普通って言われてもなぁ」
先週、万佑をデートに誘い、どこか行きたい場所や食べたいものがないか聞いたけれど、返ってきたのは『普通でいいです』だけだった。
環にとっての普通は、彼女にとっては贅沢なことになるのかもしれないと思うと、店の予約やデートコースを決めきれないのだ。
「あああ……難問だ」
木曜の夕方、仕事の合間に会社のデスクで頭を抱えて唸る。
どうしたら万佑が楽しんでくれるのか、考えれば考えるほど分からないのだ。