同期以上、彼氏未満
「私、昴の前で裕和に電話してもいい?」


「え、ほんまに?」


「昴が隣にいたら私は安心だし、もしかしたら昴も、と思って」


「ええの?」


「うん」


すぐにその場で裕和に電話をかけた。


『もしもし』


「裕和、今しゃべっても平気?」


『いいけど』


「一度ふたりで会って、話を聞いてくれないかな」


『いいけど』


「いつなら都合がいい?」


『うーん、今週土曜の午後は?』


「いいよ」


『俺にとって悪い話だってわかってんのに聞かなきゃならないんだからさ、なんかメシでもおごれよな』


「なに食べたいの?」


『初めて行ったイタリアンかな』


「あそこのイタリアンね、じゃあ私の名前で予約しとく」


『もう二度と行けないって思ってたから、良かった』


「え、別にいつでも行けるじゃん」


『わかってねーな、あの店に行ったらイヤでも恵のこと思い出すからだろ』


「なんか、ごめん」


『ま、話の内容は想像つくけど、楽しみにしてるな』


「じゃあまたね、おやすみ」


『おやすみ』


電話を切った私を、昴は突然抱きしめた。


「ど、どしたの?」


「須川さんと、思い出のイタリアン行くんか・・・」


めちゃくちゃさみしそうな声で、私まで悲しくなってきた。


「大丈夫だよ、昴とつきあうってちゃんと話すし、お昼食べたらここに帰ってくるから」


「俺んちに帰ってくれるん?」


「だめ?」


「だめなわけないやろ、大歓迎や」


< 105 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop