同期以上、彼氏未満
その日は本当に、「ほっぺにチュー」までで、少し物足りなかったけど。


その日以来、会社でも特別な感情が芽生えて、少し目が合うだけで幸せだった。



そして、土曜日になった。


昴は気をつかっているのか、朝から何も連絡してこなかった。


返しそびれた合鍵を持って、レストランで窓側の席についた。


ビルの5階から見下ろす街は、まもなく咲くだろう桜のように春めいていて、歩いている人の服装も華やかだった。


「お待たせ」


顔をあげると、裕和がテーブル脇に立っていた。


「ごめんね、忙しいのに」


「なんだよそれ、イヤミか。


おかげさまで、プライベートは暇だからな」


「それは・・・」


「最後だからな、5000円のコースにするか」


食前酒とメイン料理を選び、オーダーした店員さんがさがると、ふたりの間には何とも言えない空気が漂った。


「食べ終わってから聞こうと思ったけど、イヤなことだってわかってるから、先に聞いて食事で発散することにした」


早く言ってくれよ、って顔した裕和に、


「昴と、つきあうことにした」


私は目を見ながら、ハッキリと伝えた。


裕和は数秒間天井を見上げてから、


「俺じゃダメで、浦野がいいのはなんで?」


しぼりだすような声で聞いてきた。


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