同期以上、彼氏未満
「メグの彼氏の立場で考えたら、もしかしたらプロポーズしようと思ってたかもしれへんけど、東京本社へ異動の話が重なって、メグのキャリアを応援したい気持ちと、メグにそばにおってほしい気持ちと、板挟みでツラかったんちゃうかな」


「男子の立場って、そういう感じなんだ」


「そうやで、プロポーズするってことは、お互い支えあって生きていくってことやから、慎重になるやろ」


「昴は、彼女にプロポーズしようって思ったこと、ある?」


「いや、正直、まだないわ」


着いたで、と自転車を渡された時、一瞬手がふれた。


電気がビビッと走ったみたいに、熱くなった。


「送ってくれてありがと、じゃ月曜日ね」


「ああ、月曜日にな」


ガッツリ手をつないだことはなくても、背中をたたいたり腕をつかんだりしたことはあったはずなのに、どうして「手」に反応したんだろう。


考えすぎかな、とその時は流していた。




そして今、満員電車から脱出し、トイレで服やメイクの乱れを直し、東京本社へ向かった。


「おはよーさん、メグ」


「あっ、昴おはよ」


久しぶりに見る昴のスーツ姿に少し驚いて、しばらく見ていた。


「なんや、俺のスーツ決まりすぎてて、みとれてるんか」


「んなことあるわけないじゃん、昴は自意識過剰!」


「メグ、正直に言うてええんやで」


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