同期以上、彼氏未満
昴は、どこまでもまっすぐで。


私は、いつまでも素直じゃなくて。


あの時に戻れたら、なんて感傷にひたるのは意味がないって思ってたけど。


昴の予言通り、後悔しまくることになるとは、まだ考えてもいなかった。


居酒屋を出てタクシーに乗り、ホテルへ戻った。


「ほな、おやすみ」


「うん、おやすみ」


一度だけ振り向くと、昴は部屋に向かって歩いていた。


その背中を、追いかけたい衝動にかられたのは事実で。


その事実に打ちのめされてる自分に気づいてしまった。


プロポーズを断るなら今だ、という気持ちと。


断るなんて、そんなひどいことできるわけない、という気持ちと。


グチャグチャに入り乱れて、なかなか寝つけなかった。



明け方に眠りにつき、気づいたらもう8時で。


昴に『ごめん、いま起きた!』ってメッセージを送ったら、『無理すんなや、ゆっくりでええで』とすぐに返事がきた。


朝食会場のレストラン手前で、昴は本を読みながら座っていた。


「昴ごめん、待っててくれたの?」


「当たり前や、俺めっちゃ優しいやろ」


「うん、ありがと」


「なんや、攻撃されるかと思ったのに、せえへんのかい。


素直でかわいいやんか」


< 57 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop