同期以上、彼氏未満
裕和の実家へは、午後2時過ぎにおじゃました。


ものすごく緊張して、


「同じ会社に勤めております、す、杉森恵と申します。


よろしくお願いいたします」


自分の名前で噛みたおすという失敗からスタートした。


ご両親とも教師だとは聞いていたけど、まさかの大学教授だった。


「恵さんのご両親のお仕事は?」


「父は自営業で、母は専業主婦です」


「そうなの、どういった関係のお仕事なのかしら?」


「デザイン会社を経営しております」


「私たちとは真逆のことをなさってるわけだ。


私たちは法学部の教授なものでね」


「恵さんは、どちらの大学のご出身?」


「父さんも母さんも、尋問みたいなことすんなよ」


「尋問だなんて、そんなつもりないわよ。


最初が肝心だから、聞きたいことはうかがわないと。


お互い忙しくて、ゆっくりお話もできないでしょうし、ねえ?」


「お忙しいのにお時間つくっていただいて、申し訳ありません」


「恵と10月から二人暮らしして、来年には籍を入れようと思ってるから」


「裕和が東京に戻ったら、籍だけでも入れたらいいんじゃないの?」


「一度ふたりで暮らしてみて、お互いの生活リズムを確認したいんだよ」


「あら、じゃあ同棲してみて合わなかったらやめるってこと?」


< 69 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop