同期以上、彼氏未満
「は、何その言い方」


「裕和は、私がいくら言っても洋服は脱ぎっぱなしだし、せっかくふたりで暮らしてるのに週末はどこへも出かけないし、なんのためにふたりでいるのかわからないよ」


「なんのためって、つきあってるからじゃん」


「つきあってれば、もうすぐ結婚するなら、相手の気持ちとか考えなくてもいいわけ?


私は、そんなのイヤだよ」


「イヤなら出てけば?」


「じゃあ出てくよ!」


バッグとコートを持って、部屋を飛び出した。


夢中で歩いて、気づいたら電車に乗っていた。


・・・どこ行こう。


詩織は、彼とスノボ行ってるし。


実家は、イルミネーション見に札幌へ旅行中だし。


彼氏がいない友達へ連絡しようとスマホを出そうとしたら、勢いで出てきたからスマホを家に忘れてきちゃったし。


どうしよう、イブにどこ行くあてもなくさまようことになるなんて。


とりあえず次の駅で降りたら、たまたま昴の家の最寄り駅だった。


昴、あの付箋の子と出かけてるかな。


ダメもとで部屋に行ってみて、昴が一人だったら愚痴を聞いてもらおう。


商店街を歩いていたら、店先でケーキを売っていた。


一番小さいチョコケーキを買った。


もし昴が彼女と部屋にいたら、


「ふたりで食べて」


って、意味不明だけど渡しちゃえばいい。


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