同期以上、彼氏未満
「どしたん、メグ?」


昴の心配そうな声で初めて、私は頬をつたう涙に気づいた。


「あ、ごめん、なんでもない。


年かな、涙もろくて困っちゃうよね」


「須川さんには内緒やで」


昴はそう言うと、私を優しく抱きしめた。


「泣いて楽になるなら、泣いてええで」


私は、声を殺して泣いた。


この涙は、なんの涙なんだろう。


好きな人に好きと言えない、悲しい涙?


素直になれなくて苦しい、悔し涙?


ひとしきり泣いて昴の胸から顔を離すと、グレーのスウェットの胸元は、涙で濡れて色が濃くなっていた。


「ごめん、汚しちゃった」


「気にせんでええよ。


少しはスッキリしたんか?」


「うん、ありがと」


「俺でよければ、いつでも胸貸したるからな」


昴はティッシュで、私の目元をふいてくれた。


「メイクが落ちて、パンダみたいになっとるで」


「ええっ!」


慌てて手鏡を出そうとする私に、


「冗談や」


ケラケラ笑いながら言う昴を見てたら、私もつられて笑ってしまった。


「コーヒー冷めるで。


ケーキめっちゃうまそうやんか。


なあ、きっちり半分にすんの?


俺、今日あんまし食うてへんし、おっきめに食べてええかな?」


「いいよ」


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