同期以上、彼氏未満
「詩織はいっつも、言いたいことだけ言うて寝るんやからな」


「そうだよね」


「じゃ、俺はそろそろ帰るな」


「うん、気をつけてね」


「帰らないで、とか言わへんのか?」


「言わないよ」


「俺は、帰りたくないんやで」


「えっ?」


「詩織の言う通りや、ほんまはメグを連れて帰りたいわ」


「何言ってんの」


「俺は、本気やで。


メグに迷いがあるんやったら、俺はいつでも待ってるからな」


ほな、と昴が玄関のドアを開けたら、東京とは思えないほどの雪景色だった。


「昴、危ないから泊まってきなよ」


「ええの?」


「だって、詩織もいるし」


「須川さんには内緒やで」


昴は、すんなり室内へ戻ってきた。


「裕和の部屋着でよければ出すよ」


「このままでええよ」


「じゃあ、すぐ布団ひくから」


「手伝うわ」


リビングに布団をひいて、シーツをかけていたら、昴の手にぶつかってしまった。


「あ、ごめん」


「平気やで」


そのまま、昴の手にふれていたい衝動にかられた。


胸が苦しい。


「メグ、どしたん?」


「ううん、なんでもない」


昴に、好きって伝えられたら。


この、中途半端な状況を、変えられるかな。


「顔赤いで、熱でもあるんか?」


昴は、私の首もとを優しく手でふれた。


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