同期以上、彼氏未満
「おはよ、詩織」


「もうー、完全に私が邪魔者じゃん」


「そんなことないし」


「いいからいいから、私は退散するから、ふたりでゆっくりしてって」


「え?」


「なんや詩織、帰るんか?」


「うん、彼とデートだから、家帰ってシャワー浴びて着替えなきゃ」


「気いつけてな」


「うん、恵、がんばるんだよ」


「がんばるって、何を?」


「じゃあねー」


詩織は、あっという間に帰っていった。


「詩織、相変わらず速いよね」


「いらち、やな」


「簡単なものしかないけど」


「すげー、俺、フレンチトーストめっちゃ好きやねん!」


昴は、フレンチトーストとトマトとリンゴとコーヒーを、きれいに食べてくれた。


「ごちそうさん。


俺が食器洗うから、メグはゆっくりしてろや」


「あ、ありがと」


昴は、鼻歌を歌いながら、食器を洗っている。


裕和は、朝ごはん食べないし、食器を洗ってくれたことないな。


比べることじゃないような、比べる必要があるような。


「ほな、俺もそろそろ帰るわ」


キッチンで背中を向けて、タオルで手を拭いている昴を見てたら、無性にいとおしさがこみあげてきた。


あとは、よく覚えていない。


体が勝手に動いて、気づいたら、昴を背中から抱きしめていた。


「か、帰らないで」


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