月夜に還す
路地の向こう側に駅前の賑やかな明かりが見える。
(一瞬だったね…)
公園からここまでの五分弱が、まばたき程の時間に感じた。
(もう、会うこともないのかな…)
たった五日間。幸香にとっては奇跡の再会だった。
きょうやっと、彼と『幼馴染み』として話すことが出来ただけで、満足しなければいけないと思う。
(私は、他の人と結婚するんだから…)
自分の足元に視線を落として、そんなことを考えながら歩いていると、突然柔らかな壁のようなものにぶつかった。
「きゃっ!」
ぶつかったのは一歩前を歩いていた滉太の背中だった。
「ご、ごめんっ、ちゃんと前見てなかっ、」
慌てて謝る幸香の言葉は、滉太によって遮られた。
振り向いた滉太に、幸香は突然抱きしめられていたのだ。