月夜に還す
公園の中のベンチに座ると、幸香は両手に抱えていた花束を隣にそっと下した。
通り沿いに並んでいる街路樹の間から綺麗な三日月が顔を出している。
「はい、これで良かったか?」
横から差し出された手にはミルクティの缶が握られている。
「あ、はい。」
反対の手にブラックコーヒーを持った高柳が、ベンチの反対側に腰を下ろした。
その手をじっと見つめていると、私の視線に気付いたのか、高柳がこちらを見た。
「コーヒーの方が良かったか?ブラックで良ければこれを飲むか?」
「い、いえ、ありがとうございます。ミルクティ、好きですので。」
「そうか、良かった。」
フッと、息を吐くように笑った彼は、コーヒーのプルタブを音を立てて開けた。