月夜に還す
拙い約束
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幸香が小学校入学と同時に両親が購入したマンションの隣の部屋に、滉太は住んでいた。
幸香が両親と引越しの挨拶をしに隣の家に行ったのが、二人の初めての出会いだ。
彼は一つ年上の小学二年生の男の子。
幸香の両親は娘の初めての登下校を、隣に住んでいるというだけで彼にお願いした。
半ば押し付けられたようなものだったけれど、彼は特に嫌がるそぶりもなくそれを引き受けたのだ。
最初の一週間、登下校を共にする間に、二人はすっかり打ち解けた。
二人とも一人っ子で都合を合わせる兄弟がいなかった為、放課後もお互いのどちらかの家で遊ぶことが多かった。
滉太の母親はフルタイムで働いていて、平日は帰りが遅かったため、母親が専業主婦の幸香の家で宿題をしたり、夕飯を食べたりするように、自然となっていった。
反対に休日は、滉太が家族との外出に幸香が着いて行ったりと、お互いの親が持ちつ持たれつの間柄で付き合いを重ねていった。
二人はいわゆる『幼馴染み』というやつだった。
そして古くからの物語にもあるように、幸香は滉太に恋をした。
滉太は幸香にとって、『幼馴染みで初恋の相手』という方が正しいだろう。