シネコン
3、抗えぬ微笑み
いつしか、降り出した秋
雨の中を最寄り駅まで歩
くのが憂鬱だったのか、
彼女を車で30分程の
繁華街に希望通り送るこ
とになった。
埃っぽい車内を駐車場の
薄明かりがかき消したせ
いで彼女は躊躇すること
なく助手席に収まった。
詮索にならないように気
遣いながらたわいもない
世間話を続ける。
結局、約束の場所に着く
までの間、一度も助手席の
彼女を覗き見しなかった。
正直に言えば、
できなかった。
一度そうしてしまうと何
度も繰り返しそうで、彼
女に疎ましがられるのが
怖かったからだ。
雨の中を最寄り駅まで歩
くのが憂鬱だったのか、
彼女を車で30分程の
繁華街に希望通り送るこ
とになった。
埃っぽい車内を駐車場の
薄明かりがかき消したせ
いで彼女は躊躇すること
なく助手席に収まった。
詮索にならないように気
遣いながらたわいもない
世間話を続ける。
結局、約束の場所に着く
までの間、一度も助手席の
彼女を覗き見しなかった。
正直に言えば、
できなかった。
一度そうしてしまうと何
度も繰り返しそうで、彼
女に疎ましがられるのが
怖かったからだ。