シネコン
「ありがとうございまし


た。」


二度三度と深々とお辞儀


をするたびにショートカ


ットの髪が揺れ微かに


清涼な香りが漂い役不足


の安月給取りの胸に細波


を呼び起こした。


さっきまての無遠慮な視


線では見られない対象を


前にしながら、周囲の好


奇にあふれた目を気にし


て、せっかくのチャンスに


その場を立ち去ることば


かりを考え始めていた。
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