ただひとつの恋。




「だから、誰の言葉も受け入れなかったんだ。

 だけど、彼女は、そんな俺でいいって言ってくれた。
 君を一番に思って、女々しく忘れられないでいる俺でいいって。
 そんな俺が好きだって言ってくれたんだ。」


横を見ると、あなたの話を黙って聞いている彼女が見えた。

穏やかで、あなたを包み込んでくれるそんな空気が見えた。


よく見ると、私が見たことのない時計を付けて、左手の薬指には指輪が光っていた。


・・・どうして気づかなかったのだろう。



毎年見ていたはずなのに。


何にも気づかなかった自分に、何も見ていなかった自分に、自分が一番驚いた。





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