滅びゆく世界を夢見て俺は
かつて何でもない毎日をダラダラと無駄に使い捨てているのが日常だった頃、ヒマ過ぎる時間を埋める為だけのテンプレートな会話がいくつかあった。

そのひとつに「明日世界が滅亡するなら最後に何を食べる?」ってのがあったのを思い出す。

幼い頃から人生の様々な場面で何度もされたし、自分でも何度かした。

その都度テキトーに何か考えてだったり、何も考えずにノリでだったりして答えていたはずなのに、何と答えていたかをイマイチ思い出せない。

正に今がその時なのに。

だがまあいい。

どうせ今となっては選択肢など死ぬ程限られているのだ。

かつて誰かが言っていた『有名店の高級料理』なんてのは不可能過ぎて笑える。きっと今頃はシェフの皆さんは揃ってゾンビかゾンビのエサになっているだろう。

なまじ生き延びていて万事準備万端だとしてもどうやってそこまで行けばいいのか。歩いてか?

ゾンビの溢れる街を闊歩して高級店を訪れ、ゾンビどもに囲まれた店で高級料理を頂く。シュールにも程があるだろ。

だから俺は今実現可能な選択肢の中から最後の晩餐にふさわしいかどうかは知らないが、最後にやってみたい事を選んだ。

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