生きるための傷

episode 2

夏休み序盤。ショッピングセンターの1区画で勉強に勤しんでいた。



────ピコン。




「メールの通知...誰だろ。」

スマホを手に取った瞬間、通知音が連続で響き渡る。



ピコンピコンピコンピコンピコンピコン

「うわぁぁぁぁあっっ!?!?!」

周りの人達の視線がどっと集まってきた。


「お前スタ爆でどんだけビビってんだよー」

目の前に現れた斎藤に一瞬殺意がわいた。




「最近暑いよなー...って、優香、長袖のパーカーなんか着てて暑くねーのかよ?」

「別に。」
こいつに言うほどのことでもない。

「いや、別にって...お前汗かいてるぞ?」
そういえば私汗っかきだった。今思い出した。
「まぁ...暑い、ね」

「じゃあなんで長袖脱がねーんだよ?」

「いや、別に、着てても、よくね」

「優香なんで急に動揺してんの?!?!」

不意に私が長袖を脱いだ。
なぜかその時斎藤は、私から目をそらさなかった。


「優香、それ、なに」


私の右腕を指さす斎藤の目は、まるで全てを理解したかのように私をじっと見つめていた。

「傷だよ」


「なんで手首じゃないの?めっちゃ肘の方にできてるね」

「だって、カッターで切ったわけじゃないから」

「え、、血が固まってるけど?カッターじゃないなら、なにで...?」
「爪。」



正直、自分の体に傷をつけるのだから、道具を使いたくなかった。でもこれを聞いたらさすがに斎藤に引かれたよな。

「へー、爪ってそんなに痕残るんだね。俺なんかほら!カッターだけどもう傷残ってねーだろ?」


えっ。


「斎藤も?え、いつ??」

「高校受験の頃だよー。優香もだろ?」

「いや、2ヶ月くらい前だけど」

斎藤は笑いながら驚いていた。
「え、優香なんで??受験つらくなかったのかよ?こんな自称進学校!」

中学の頃に実は彼氏がいてそいつがリスカとか好きじゃないって言ってたから抑えてたんだよ、なーんて言えるわけない。

「まぁ、そんなには」

「へー。お互い色々あるね!」

こいつはなんでこんなにハイテンションなんだ。


少しの沈黙のあと、話を変えたのは斎藤の方だった。
「あ、そうだ。優香は行くの?明日の朝日祭」

朝日祭は、私の行ってる高校とは別の公立高校が
3年に1度一般公開しているいわば学園祭だ。

「朝日高校に入学した知り合いは少ないからなー...行かないと思う」

「そっか、まぁ関係ないけど」

ただでさえ課題に追われてるのに、行けるわけないない。
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