青の瞳に映るのはーー

君の声が、離れないーー。

「青って耳、いいな。
俺、聞こえなかったわ」

なんだよ、そんなことかよ。
「だいたい、執事の癖に何あのタメ語。
嫌でも聞こえるわ」


「へーー、たぶん聞こうと思わなきゃ……香織ちゃんの声、拾えなかったと思うよ?
そんなに気になるんだ、あの子。
まあ、キスしたしねー、もう美心は吹っ切れたのか?」


嫌にニヤニヤ顔の、翼。

肩に置かれた手を払う。

「何が、言いたい訳?」


翼の考えてることが、わからない。

「さっき、必死だったなお前。
そんなに失いたくなかったのか?
お前は、誰にでもかんでも、キスしないろ?

お前はそう言う奴だからさ」



"お前は、誰にでもかんでも、キスしないろ?"ーー


しないよ。


誰でもいい訳じゃないーーー。

俺は、裏方からテーブルを見た。

君が、いるテーブルをーーー。






「ちょっと、香織に触らないでよ‼」











賑やかなカフェは、静まりかえっていた。







「離して下さい‼」








 


君の泣きそうな声が、聞こえたーーー。




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