先輩の彼女にしてもらいました
「や、やめて」

ワナワナと体が震えてきた。
もうこれ以上、アキちゃんと話したくなかった。

「すずな、私達とまた一緒にやろうよ」

「ごめん、彼に電話しないといけないから、切るね」

震える声で早口にそれだけ言うのが精一杯だった。

「すずな、なによそれ、男のことばっかり考えて。そんなのっ・・・」

ピッ。

電話を切り、胸に手をやる。

ハアハアハアハア

息が苦しくなりかけたけれど、なんとか持ちこたえた。

だいぶこの症状が出ることがなくなって、精神的に安定してきたつもりだったのにな。

N高に編入してまで陸上部に入るなんて、今の私にはあり得ない話だ。

だけどアキちゃんに、いくら言っても私の言葉が届くわけない。中学の時からそうだった。彼女が一度こうと言ったら人の話に耳を貸そうとなんてしない。

アキちゃんは、勘違いしているんだ。私にまだ陸上への未練が残っていると思ってるんだ。

だけど、私はまた陸上がやりたいわけではない。

中学で記録を作ったばかりに周りからは、過剰な期待をされたけれど、私にとって陸上は中学でやり切ったと思っていたし未練はなかった。



もう、これ以上私の生活に踏み入ってこないでほしい。

もう、支配されるのはうんざりだった。

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