先輩の彼女にしてもらいました
「やめろ、アキ」吉木くんが私の手を離す。

「もうやめて」ヒナちゃんの悲鳴に似た声がする。

だけど、アキちゃんがまた、私を叩こうとして右手を振り上げたので、私は一瞬目を閉じる。

数秒経っても、痛みは襲ってはこない。

「吉木、女同士の喧嘩に割って入って加勢するなんて、お前それでも男かよ」

怒気を含んだ聞き覚えのある声がして、目を開ける。

その声の主が、誰かっていうのは、見なくてもわかっていた。

時田くんは、私の横に立ちアキちゃんの右手をきつく握り、捕まえていた。

そうしてもう片方の腕は私を庇うように肩に回されている。

「吉木、アキは蒼井のことを叩いたんだから、同じように蒼井にもアキを叩かせてすっきりさせてやれよ」

時田くんの無茶苦茶な申し出に吉木くんは黙って首を振る。
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